過去の憂鬱 ラ・ママ編

これは2007年の12月末に渋谷のライブハウス「ラ・ママ」で起きた火事から、復旧へ向けての作業の中で起こる色々な出来事を書いた話です。

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ラ・ママ編 (1)

12月23日夜マティから電話があり、ラ・ママの火事の事を聞かされる。
「楽屋側から火が出て扉が焼けて店内に煤が入っただけで、年内に再開できるんじゃないかな?」
軽い小火程度?そんな感じの話で、私は「正月休みにエアコンの清掃してやるから感謝しろよ〜」と言って電話を切った。マティは顔が広く色々な事に対処出来るので、私が出しゃばる事はないと、その時は思った。

12月24日会社に事情を話したら「正月休み中好きに使って良いよ〜」との事。ただ倉庫が埼玉県朝霞市にあるので「車の手配やらで面倒だな〜」とか思ったりしたが、ライダウンの機材車で、きゆなに運転手と手元をやらせて、揚げ物腹一杯食べさせとけば大丈夫なんじゃないかな?とも思った。

夜、秋間さんから電話。アンプ類の点検、修理、保険屋さんに出す見積もり作りを引き受けたとの事。男秋間経夫素早く的確な対応だ!
見舞金に付いての話し合いをするのだが、もの凄く正直な話私はあまり金銭的な余裕がない。
こんな時は「社長!今まで本当に世話になったから、これ取っておいて下さい」とか言って100万円くらいポーンって出せたら格好良いと思うし、ラ・ママ救済ライブ!とか言って渋谷C.C.Lemonホール(渋谷公会堂)クラスでガッツリお客さん集めて収益を寄付した上で、ステージからカンパをつのったり何かした上で「これからもラ・ママをよろしく!」なんて事が出来たなら・・・・・・・
それは私じゃなくて大成功したバンドマンにやってもらいたい。

誰か代表して集めるとか、ラ・ママの口座を公開して見舞金を募るとか色々話したが、私が音頭を取ると規模が小さくなるので、それは人徳のある人か大きな動きに発展出来る人間に託すべきだと思い、私が動いてもさしさわり無さそうな人間に見舞金を持ってラ・ママに行くよう連絡する。
みんなラ・ママの事を心配しているのが伝わってくる。

12月25日マティに電話で状況を聞く。
年越しと27日の変わりの会場が決まり復旧に向けて順調に進んでいるとの事。その話をしている後ろで「オーバーホールに出してからじゃなければミキサーに火を入れる(電源を入れるの意味)べきではない!」とPAの石崎の声が聞こえた。「んっ!ミキサー卓も煤を食らったのか?」石崎に任せとけば間違いないので私の出しゃばる事ではないが不安になる。
「んっ?って事は調光卓も煤を食らったのか?」今ラ・ママの照明スタッフは殆どが女性でハードな部分(主電源からの引き回し等)のメンテナンスが出来る人間がいないはず・・・・・・
不安になるが、私が手出しできるものでもないし・・・・・・
26日は会社の忘年会で、27日仕事終わり次第行くと伝えると、その日はラ・ママの人間はいないので28日にして欲しいとの事。

12月26日忘年会
仕事を終え忘年会。ここ数年、新宿のかに道楽で忘年会〜ゴールデン街の「青春」でオーディオのチェックがパターンとなっている。

12月27日ラ・ママ復旧準備
状況が把握出来ていない中で、アバウトにでもスケジュールを切っておくべきと思い、年末動ける人間の確保をしようとするが、無給である事とラ・ママに対して思い入れがある人間でハードな作業を出来る奴は私の周りには意外に少ない事に驚く。
念のため近所の飲み屋友達の大工に事情を説明してスケジュールを借り抑えする。この場合お金が動くのでどうしたものか?とも思ったがラ・ママの為なら動くしかなかった。

12月28日
もの凄く下らない事なんだが、今年の正月休みは、アナログ音源のデジタル化の作業を「あ〜でもない、こーでもない」しようと思い色々なパーツを買い揃え、CDのラックを木工とアクリル板で作ろう!とアクリル加工は業者に頼んで既に出来ていて、木工の構造も頭の中にあったので後は正確な寸法を出すだけで、楽しい正月になるはずだった。

年内最後の仕事を終えラ・ママに向かう。大島ラーメンを過ぎて坂を上ると直ぐに火事後の匂いがした。
「既に4日経過しているのにこの匂いは小火じゃなかったのか?」急いでラ・ママに入るとそこに恐ろしい地獄があった。

そして一番恐ろしい事は、今ここが地獄だと気づいているのが私一人だった事だ。

つづく

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ラ・ママ編 (2)

店内にはかなりの煤が舞っていて、スタッフやバンドマンが色々な物を拭き掃除をしているのだが、煤だらけの床から物を取り、磨いて煤の中に並べている。磨かれた物に養生はかけられおらず、ランダムに清掃するものを選んで歩き回るので、床の煤が舞い上がり磨かれた物に煤がまた舞い降りていた。
なによりも理解出来ないのが、廃棄されるであろう物達が必要なものと同じ場所にあり、明らかに捨てられる煤けたボールペンを磨いている人もいた。
モルタルで波を作った壁は煤を落とさず洗剤を使い、水で洗剤をしっかり流し落としてないので壁に煤が定着してしまっている。表面がつるつるになっているのは、みんなが心を込めて一所懸命に磨いたからだろう。ただ、壁に関しては元々汚かったので・・・・・・

天井や壁には一時的に打ち付けられ、放置された釘やビス、そこに巻き付けられた番線に埃が溜まり、そこに煤が綿飴の様にへばりついている。

楽屋側の壁が応急処置されているのだが、外壁がなんと!むき出しの石膏ボード。木工の天井は一辺が焼け落ちたか、クーラー撤去の際に壊され、天井内に防音の為に置かれた砂袋の重さに生きている梁が悲鳴を上げてしなっている。
天井内を覗き込むと一階部分の汚水管の塩化ビニールが溶けてしまっている。木工の組方が狭く配管の復旧の為には相当ノコを入れる事になるだろう。天井は持つのか?そして煤がどんな方向で流れたのかが判る様に煤の道があった。こいつをやっつけないと匂いは落ちないだろう。

ラ・ママには排気が二系統あり一系統が起動しておらず、モーターベルト全て問題無いのだが、電源経路が死んでいる。もう一系統生きているが全く空気が流れていない。ダクト内で何かが起きているのか?

ガスメータが外されている。この手の清掃でお湯が使えないは痛い。
電気系統は主幹、動力とも無事だ。が、1.6ミリが何の書き込みも無く約60本切断されている。放水後のショートが怖くて主幹を落としてぶった切ったのだろう。これはプロの仕事ではない。電気屋は入っていないのか?
店内は明るく無理すれば営業出来そうだが、殆どがクリップライトと作業灯でフェーダーを噛んでいないので客電としは機能しない。照明は組み直されている。確実に照明屋は来ている。

水道は生きているが、トイレの床から泡が出ている。清掃の際に煤を流しすぎたので配管の状態が悪くなって逆流しているのだろう。って事は雑排水槽は?マンホールを探すと、ドライエリア、楽屋兼一時待機所にコンパネが敷いてあり代理のポンプが突っ込んであった。一応判ってる人が入っているのだろう。
多分ポンプは無事で電源経路だけが死んでいるのだろう。

PA関係は代機ミキサーがあり、養生されている。パワー系のアキュフェーズやYAMAHAは恐ろしくタフなので大丈夫だろう。

作業着を着た人間が3人炭化した天井に補強も入れずに無理矢理柱を立てて持ち上げようとしている。床を叩かず柱位置を決めているので床がきしんでいる。勿論水平も出ていない。
「辞めろ!馬鹿野郎!」と叫びたかったが、誰がどんな経緯で関わっているのか私には判らないので、ただ歯を食いしばって我慢した。
何故私は直ぐに飛んでこなかったのだろう?何故この事態で一番に声をかけてもらえたかのだろう?
自分が情けなく泣けて来た。

つづく

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ラ・ママ編 (3)

見舞金を持って社長に会う。マティは気を利かせて席を外し二人だけで話すが、15分位話をした所で来客があり中断。
店内に戻り、業者さんと雑談しながら、この人達が何の業者でどんな工事をどんな段取りで進めるのかを探る。話して行くうちに全くのノープランである事、大工でも、電気屋でも、配管屋でもない事が判明。頭は空調屋。年末は30日まで年明けは4日からしか仕事に来ない・・・・・・

照明チームと雑談。火事のあと直ぐに清掃し、機材のチェックと組み直して新しい調光卓のテスト前に東京電力にケーブルを切られてそのままになっているとの事で、次に照明屋さんが来るのが1月3日との事。

PAチームと雑談。とにかく直ぐに復旧との事で準備はしたが、小さい音でというのは出演バンドさんに悪い、もとから音漏れで近所に迷惑かけ続けて来たのにドアも付かない、天井も穴が開いた状態で音を出す訳には行かない。この煤の匂いの中にお客さんを入れる事自体がまずい。復旧の予定が二転三転し今の状態があり、この先の予定もハッキリしていない。
しかも、代機ミキサーは1月20日には返却しなければならなく、その後導入されるミキサーはアナログではなく、デジタルで、年末のこの時期で見積もりすら取れていない。
「んっ!なんでデジタルにするの?」とアナログな人間の私は疑問に思うのだが、現在ではこの規模のミキサーは殆どがデジタルでアナログは超高級品しか存在しないとの事。
「超低音の出ない古いJBLのスピーカーにデジタルか〜どんな音が出せるのだろう?」ちょっとドキドキしてきたが、今はそれどころではない。

スタッフとキッチン内の話を聞く。
開封されは物は全て処分して、後は開店に合わせて酒屋さんが動いてくれるとの事。冷蔵庫、製氷機、ソフトクリームマシーン?等は煤食らっているので駄目らしい。ビールサーバーは生きているとの事。
駄目な物が何故残っているかは、保険屋さんの問題と社長がレンタルだったのか買ったものなのかを覚えていないとの事。

マティと話合いをしようとするが、ひっきりなしに電話がかかってくる。31日に向けての準備対応、復旧後のブッキング等対応で手一杯だ。っていうか、この時期に代わりの会場見つけて、バンド説得して、助っ人集めて、滅茶苦茶働いて来た訳だ。そして、ラ・ママが健在で素晴らしい力を持っている事を31日別の場所で証明する為に頑張っている。今、私があ〜だこ〜だと口出しするのはかえって迷惑になる。

概略は理解した。私は何をしたら良いのかを扉に話を聞きに行く。
ラ・ママのステージに上がる時は、必ずこの扉の前で「ホール内の全ての人を熱狂させれます様に」と祈りを捧げ、立て付けの悪い扉を力を込めて開けるとアドレナリンが吹き出してくる。沢山のバンドが、この前で声を上げステージに向かう姿を見て来た。
火事の時、社長はこの扉を開けて消火しようとしたが、開けられなかったらしい。もしも、その時この扉が開いていたら店内に火が入り被害はもっと大きかっただろうし、社長もどうなったかわからない。
この扉には何らかの結界があるのだろう。そして、この扉は社長とラ・ママを守る事を最後の仕事として鉄くずになった。
「どうしたらよい?何がして欲しい?」と扉に聞いてみたが返事はない。どうやら私にはスピリチィアルな力が無いようだが、衣装もメークも無し、バンドマンでもミュージシャンでもない作業着を着た私にいつもの様に「気合いを入れて開けろ」と言っている様に思えた。

つづく

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ラ・ママ編 (4)

「さて何をしよう?」
音漏れがしない状況を作って、復旧前に音響テストをすませて、煤の匂いを取って、店内を原型をとどめたまま奇麗にして、ライブがスムーズに行える動線を作って、電気の経路をハッキリさせて、照明をつけて・・・・・・
「う〜〜ん」考えても切りがないし、それにどう関わって行くかだ。「関わる?面倒くさい!まず指揮権握ってしまえ!」後から、ノコノコやって来て・・・とか一瞬考えたが、ここに集まっている人間のなかで一番無神経で強引なのは私で、社長にずけずけ物が言えて、誰に嫌われもその後のラ・ママの運営に支障がないのも私だ。

「よし!壁作るぞ!」元々排気ダクトがあってデットスペースだった部分の寸法を計ると出来上がりがイメージ出来た。ほんの少しだけラ・ママが狭くなるが、そこまでお客さんが入るのは年間数回。集客数が減るのは一回あたり5〜6人で、店にたいした損失は与えない。石膏ボード、砂袋、グラスウール、ついでに鉛・・・(鉛は予算的に無理か?)社長の大好きなもので遮音する。この壁にたる木打ち込んでを天井を支えよう。構想はまとまった。

私は未だかつて工事現場を仕切った事がない。責任の無い立場で、こそこそと働いてきただけの半人前のおっさんバイトでしかない。何の根拠も自信もい無いし、しかもまだ何も頼まれてないが、偉そうに全体会議を開く。

たった今考えたプランを話す。理解しろってのが無理な話で、図面は私の頭の中にしかない訳で・・・・
大見得を切って「俺に任せてくれ!」と言うタイミングを計っていると、マティが「ラ・ママの事も工事の事も判っているのはKaribowなので現場監督になってもらいましょう!」みんなぐずぐずの感じで頷く。
これってドラマだと起承転結の承位の所だから、ビシッと決めたかったが「ええ、やりますよ」てなゆる〜〜い感じで現場監督就任。社長から今入っている業者に話を通してくれる事になった。

あの扉に報告に行くっていうか、最後の祈りと協力をお願いした。
私には判っていた。この先この工事に立ちはだかる敵が現れる事を・・・・・・だからまだ鉄くずにならないで、その敵の相手をして欲しいと、勿論返事はない。どうやら私にはスピリチィアルな力が無いようだが、イメージする力はあるようだ。扉がニッコリ笑って私に頷いた。
とにかく、恐ろしく長い28日が終り、先の見えない明日が始まる。

つづく

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ラ・ママ編 (5)

12月29日
現場監督初日。私がまずすべき事は今入っている業者さんとの信頼関係を築く事。正確には何を出来るか、何を知っているのかを理解する事だった。
丁重に挨拶し、経緯を説明し、プランを話し何を何時までにやってもらうかを話した。が、「材料屋が今日でしまるから無理。材料屋が開くのは7日からだから工事はそれから」との返事。予想した通り厳しい戦いだ。
昨日の時点で、この業者さんがやった仕事は細かくチェックしてある、材料は東急ハンズで買ったものが混じっている。頭は空調屋・・・・確かに私の会社の使っている材料屋も今日が仕事納め・・・・やっぱり工事屋じゃない。
私を含め肉体労働者は、お盆や年末休みたがる、工期が伸びそうな時は、材料屋が休みとの嘘をよく使うので、昨日の時点で材料調達方法は調べてある、私に嘘は通用しない。

材料は業者が手配する事、軽天の柱は専門業者が行う事が決定。これで業者さんが今日やる作業が決まる。
ここが、ライブハウスである事、でかい音が出る事、年明け直ぐに営業再開する事、何一つ理解せずに、昨日まで行き当たりばったりで切ったり張ったりしていた訳だ。恐ろし過ぎる!

PAスタッフがやってくる。機材の運び出しとケーブル磨きを指示するも、運び出す場所が無い・・・・・
201号室は運悪くプロトゥール導入により改装中で、楽屋は31日楽屋で使用するとの事。取りあえず201号室の整理から始めてもらう・・・・・って言うかレコーディングスタジオ後回しにして、テーブルもソファーも捨てるように説得。

全く機能していない排気を調べると、逆回転してる「何なんだこの工事は?」逆相にして排気開始!片肺ながら蘇生。
久しぶりに店内に風が吹くと同時に吸気口からゴミが吹き出すがしばらく我慢。店内に舞い続けるしつこい煤が少しでも外に出せれば掃除の効率も上がるはず。みんなが頑張って磨いた努力を生かさねば。

配管屋さんがやって来た。丁重に挨拶し、経緯を説明し、作業内容を確認すると「天井を壊す作業は今入っている業者がするはずなのに・・・」との事。業者さんと話合い、業者側は「忘れてました」との事。
その間、配管屋さんと相談。一階部分は昔喫茶店で今は飲食店ではないので、使っていない配管が沢山あるはず、それを殺して欲しいと頼むが「一階が改装して、配管繋いだらどうする?そんな工事俺は出来ないね!」と職人らしい返事。
一階とは営業時間がズレているのだが、リハーサルはもろに営業中、もの凄い迷惑をかけているはず、天井内の砂袋の量を減らす分、配管を減らして遮音したいと私は考えていた。
一階部分との接合部分が変形して配管が上手く繋がらない所をバーナーを使って上手につなげて行く。「上手いな〜」と関心。この人なら何か分かるだろうと遮音の方法を相談すると色々教えてくれた。
配管屋さんは短時間で作業をすませて帰って行く。職人のあるべき姿だと思った。
これで一階のトイレが使える様になるのでちょっと安心。ラ・ママは被害者であるが、こうした意味では加害者でもある。現場監督が考えなきゃいけない事は山ほどあるな〜〜

つづく

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ラ・ママ編 (6)

作業日誌みたいでバンドマンのブログとは思えないですが、頑張って読んで下さいね!

空調屋さんがやってくる。排気ファンの回転方向を間違えて取り付けた人だ。丁重に挨拶し、経緯を説明し、既に直した事を説明。元々のエアコンを取り付けたのもこの空調屋さんで、ラ・ママの事を理解しているようだ・・・・・
全てを完璧な状態で1月5日復旧は絶対に無理なので一次工事、二次工事、三次工事と行程を分けて、二次、三次工事中でも営業しつづけられるような一次工事を考えている。で、私の中でエアコンは三か四次工事、大まかに設置場所、機種は考えてあり、空調屋さんとはアバウトな話し合いですませる。

その間に、なんと業者さんが煤が取れていない入り口を塗り始める・・・・・・「煤を取ってからにしましょう」と提案するが、足場は今日しか借りていない、社長が塗れと言ったから塗ったとの事。

私がラ・ママにやって来て訳24時間、復旧に携わった人達、これからどんな人が現れるかがほぼ判った。クリアしなければならない条件、順番等も判って来た。とにかく考えた・・・・・
なんかドラゴンクエストみたいな気がして来た。20年前ドラゴンクエスト2の後半、ロンダルギアの洞窟を抜けるのにもの凄く苦戦して以来、辛そうな事があると「これはロンダルギアの洞窟の戦い位厳しい」と言って笑っていた。(当時はみんなやっていたのでそれで話が通じた。)昨日滅茶滅茶に切断された配線を見た時に「これはロンダルギアの洞窟の戦い位厳しい」と十数年ぶりにその言葉を思い出していた。

恭平がやって来る。元デビルスのギターリストで、親しい訳ではないが、古くからの付き合いがあり、キャロルを、エアロをコピーし続けた仲間というだけで、全幅の信頼を置いている。本職はペンキ屋さん、27日の時点で話はついている。
私の考えは早い段階でペンキを塗る事。普通順番は後なんだが、社長、スタッフに復旧に向かっている印象をあたえ、グダグダの作業を続ける業者さんにプレッシャーを与える為に、みんなが頑張って煤を落とした部分を白く塗り、ダメージの少ない黒い部分も手を着ける。
早速恭平と打ち合わせ。ラ・ママは地下室、排気が一系統しか生きていない、近隣の方々への報告、管理者とのリレーションも取れていないので油性を使うのはまずい。水性でなんとかするとの事。
バンドマン同士の会話ではなく、現場の乗りで話は進む、私が不安に思っている煤の事を話し合うが解決策浮かばず・・・・・

昨日マティとの話合いで、清掃業者、消臭業者について調べている人がいるとの事だが、見積もりも日程も取れていないとの事、しかも社長に中途半端な形で話が通っている。まずい・・・・なんとかラ・ママの関係で詳しい人間を探して欲しいと頼んであった。
マティが携帯を開いたまま飛んで来た「Karibowさん!これ!これですよね!」携帯の画面には、廣島のドラマー魔太郎からのメール。「清掃の事ならなんでも出来る。手伝える事があったら連絡くれ!」
私と魔太郎は殆ど接点が無く、よく知らないけど速攻電話。事情を話すと速攻飛んできて、明日から入るとの事。
事態は急展開。ちょっとだけ希望の光が見えて来た・・・・

つづく

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ラ・ママ編 (7)

魔太郎、恭平、マティが声をかけたバンドマンが続々と集まり、作業が始まる。
Mataroこうした作業の時、集まったバンドマン達が「ラ・ママの為に頑張るぞ!」って思えて、横のつながりが出来て、復旧に向かうってのがベストなんだが、私は若い世代のバンドマン全然知らないし、向こうから見ると私は普通に業者のおじさんだったりする。
こんな時はちょっと強面のバンドマンがちょっと怖めに命令するか、上手い指示が出せれば良いのにって思っていたが、魔太郎はドンピシャにはまっていた。
指示の出し方、軽い威嚇、普段力仕事をしたこと無さそうなバンドマンがテキパキと動く。単なる作業になりそうになるとマティがチャチャをいれて場が和む。恭平はラ・ママのスタッフを手元に使って作業をガンガン進めている。

良い方向に向かいつつあるが、私は業者さんとの対応に苦しんでいた。私の感覚では壁一枚立てるのに半日。
それが、全く進まない・・・しかも今日届いた材料が違う・・・・
今日中に壁を作ってもらわないとまずい。業者さんの助っ人に若いお兄ちゃんが来て何とか進みだすが遅い。

色々な作業が進み、一段落付いてみんな帰って行くが、私は業者さんに付いて、あまりに遅いので手元をやって・・・うんざりしてくるが我慢し、お茶を出し、拝み倒す。

やっと骨組みが出来るが、片面だけでもボードを張ってもらわないとまずいが、既に8時を過ぎている。
かろうじて仕事が出来るおじいちゃんが私の事を気に入ってくれているので、ご機嫌を取りまくり、材料がつきるまで作業し、明日も朝から出てもらう事となる。
大晦日をラ・ママで過ごすのか?しかもおじいちゃんと二人きりで・・・・・

つづく

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ラ・ママ編 (8)

大晦日、9時半にラ・ママ到着、おじさんかなり遅れて到着、おじさんの相棒も付き合いで来てくれた。感謝!が、ボードが用意出来なかったので、残りを張って終わりって・・・・・そんな馬鹿な!
速攻大晦日に開いている店に連絡、おじさんと買い出しに、約2時間半のロス。
ダクト、配管が邪魔をして上手く壁が出来ない。おじさん達は防音の事が全く頭にないので、滅茶苦茶雑に作ろうとするので、一々頭を下げて拝み倒して複雑な形を作ってもらう。

この日はラ・ママのスタッフはチェルシーホテルに、店番が1人だけでしかも事務所でラ・ママ〜チェルシー間の配送準備。
昼過ぎから会場か変更になった事を知らないお客さんが結構やってくる。私チェルシーホテルの場所知らないし、変更のお知らせビラの地図が判りにくいし、中には怒ってる人いるし、とにかく頭を下げまくる。

夕方に何とか壁片側張り終わる。おじさん達元気そうだったので裏側の下一枚だけ張ってくれって頼むと、「karibow監督は頼むの上手いな〜」と笑いながら何とか作業してもらい「良いお年を!来年もよろしくおねがいします」と挨拶をすませ、一人きりとなる。
配管の防音、天井の補修、壁の遮音材入れ、最大の難関となるであろう電気系統の整備。もの凄く不安になる・・・
取りあえず手の着けられる雑工をつづける。
カウントダウンライブの出演者達と合うのは何となく嫌だった。やっぱり私もライブがやりたいし、ステージに立ちたい。煤まみれで身を粉にして働いた所で感動は生み出せないが、ステージに立って「ラ・ママ頑張れ!」って言った方が感動的なのは判りきっている。今から祭りをやる人間と顔を合わせた時に愚痴が出るのも格好悪いので、ある程度で切り上げて帰ろうと思うのだが、やる事が有りすぎる。
誰かが階段をおりる音が聞こえた。お客さんだと会場変更の説明をしなければならないので急いで入り口に向かう。

足音の主は森重樹一だった。
ラ・ママには歴史があり著名なミュージシャンとそうではない人達のサインが至る所に書き込まれている。
社長の考えは全てを残したい。全てのサインがラ・ママの記録であり財産。もしサインした誰かがここに戻って来て自分のサインが消されていたらどう思う?ラ・ママは全ての出演者の家であり古里なんだと・・・・
もの凄い正論なんだが、煤の匂いが残る、煤だらけの壁の店を「伝統ですから」ってお客さんを入れるのはどうしたものか?話し合いって壁2面、天井1面以外は塗り替える事になる。
残した壁には森重のサインがあり、その壁を残した意味は森重に伝えてあった。

Morisigeサングラスを取り、軽い挨拶と握手。森重は仕草一つ一つが格好良くディスイズロックンローラーで、作業着がぴったりの自分自身がちょっと恥ずかしくなる。
森重の心は決まってるのだろうし、何をすべきか知っているのが簡単な会話で判る。やっぱり森重樹一格好良い。
「Karibowありがとう」と言い残し森重は歓声の待つステージへと向かった。
簡単な片付けをして私は家路を急いだ。「笑ってはいけない〜」を見る為だ。この時点で私はロックンローラー失格だった。とにかく2007年が終わった。

つづく

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ラ・ママ編 (9)

1月1日もラ・ママに向かうが、鍵の受け渡しを忘れていて、外で待ちぼうけ。カウントダウンライブで、お疲れのマティが鍵を持って来てくれる。新年の挨拶をし馬鹿話をする。「このまま飲みに行きたい!」と思うが、スケジュールの都合で今日中にしなければならない事が沢山あったので我慢し作業を始めた。

「こんな仕事ウンザリだ!もう空調屋なんて辞めだ!」て思う事があり、それはグラスウールを使った作業の時で、今日はとにかくグラスウール三昧。「Karibow頑張れ〜〜」と独り言を言いながら作業し、明日の段取りを考える。
明日から天井の補修にかからなければならなかった。天井内を細かくチェック、ラ・ママの怖い所はチェックする度に新たな問題点が発見される事だったりする。

見れば見る程、ここが奇跡の箱だと思う。社長の思いつきで工事された部分が、箱に修復不能の致命傷を与えながら、遮音し、独特の鳴りを生み出している。
しかし、この復旧工事は社長が東急ハンズで買って来て物で直せるレベルではなく、ユニディやドイトや島忠レベルだと痛感する。「さあ〜どこまで手をつける?」と自問自答すると、誰かが階段をおりる音が聞こえた。

足音の主は紅孔雀の武田だった。
Takedaヒステリックスージースの時からの知り合いで、もう17〜8年の付き合いになる。数年前に解体をやってるって話をしたので力仕事関係で今回も話を振りたかったが、連絡先を知らなかったし、復旧に解体屋は〜って思っていた。
武田は年末のライブが中止になったが、私と同じく小火説を信じていた。復旧が遅れているので心配になりマティに連絡を取ったが捕まらず、とにかく行ってみようって事で寄ってくれたのだ。

軽く経緯を話し「大工が欲しいんだけど、明日から動ける知り合いいない?」って聞いたら。「今大工やってます。俺に手伝わせてくれ!」って返事。しかも明日から動ける!早速車の手配、材料出し、工法等細かく打ち合わせ。
これで大工仕事は任せられる。私は安心して「ロンダルギアの洞窟」に向かった。

つづく

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